アメリカの入国審査がなぜ厳しくなったのか?

厳しくなった理由
1. 行政命令による「厳格審査(Extreme Vetting)」の強化
2025年1月20日に発出された大統領令(“Protecting the United States from Foreign Terrorists and Other National Security and Public Safety Threats”)により、入国者に対して職業、渡航歴、SNSなども含めた包括的な審査強化が実施されており、入国前やビザ申請時の審査体制が一層厳しくなりました。
2. デバイス・SNSの調査が日常化
入国時に税関・国境警備局(CBP)が電子機器を検査する頻度が増加し、SNSアカウントの閲覧・保存、場合によっては内容をもとに入国拒否や拘束が行われるケースも報告されています。
3. 学生ビザ申請時のSNS公開義務
国務省は学生ビザ(F, M, Jビザ)申請者に対し、SNSアカウントを公開状態にすることを要求するようになりました。これは反米的・テロ関連の発言の確認や、安全保障の観点からの措置です。
4. グリーンカードや市民権申請でもSNS調査対象に
移民申請段階でもSNSハンドルの提出が義務化される提案が進行中であり、対象範囲はグリーンカード申請者や難民申請者まで拡大する見通しです。
アメリカ入国審査が厳格化している今、気をつけるべき点と事前に用意しておくべく資料を整理してみました。
1. 気をつけるべきポイント
✅ 入国審査時の回答
-
質問は簡潔かつ正直に(長々話すと不要な疑念を招く場合あり)
-
職業や渡航目的は明確に答える(例: “Business Meeting” / “Tourism”)
-
冗談や皮肉は厳禁(空港の係官はユーモアを共有しない場合が多い)
✅ SNS・電子機器
-
公開SNSに政治的・過激な発言や誤解を招く写真がないか確認
-
入国前に不要なデータや機密情報は削除(仕事用PCは暗号化)
-
可能なら“バーナーフォン”や初期化済み端末を使用
✅ 渡航歴・ビザ情報
-
渡航歴に中東や制裁国が含まれる場合は追加質問が想定される
-
ESTAやビザの有効期限を事前に確認
-
観光ビザでの**不適切な滞在理由(実質就労など)**は入国拒否の原因に
✅ 手荷物・持ち込み品
- 食品、農産物、現金1万USD超は申告必須
-
税関申告書の虚偽記載は厳しく罰せられる
2. 用意しておくべき情報や資料
これらを紙とデジタル両方で持っておくと安心です。
「アメリカ入国審査・事前準備チェックリストPDF」を作って、旅行前に印刷して持っておくといいでしょう。
用意しておく項目 | なぜ用意するのか?その理由 |
滞在先の住所・電話番号 | 入国カード・口頭質問で必須 |
帰国便のEチケット | 不法滞在防止の意思を示せる |
滞在スケジュール表 | 旅行者の場合は観光予定、ビジネスの場合は会議予定 |
雇用証明書や会社名刺 | 職業・渡航目的を説明 |
銀行残高証明やクレジットカード | 経済的に自立している証明 |
招待状や現地企業からのレター(出張者) | ビジネス渡航の場合に有効 |
旅行保険証券 | 健康管理・緊急時対応の備え |
SNSアカウント一覧 | ビザ・入国での提出を求められることがある |
現状の動き
件数の目立った増加
CBPの電子デバイス検査は対象者全体のうち実際は0.01%未満と少数ですが、検査の対象範囲と強度は全体的に上昇傾向です。
入国時のリスク対応が必要とされる状況
ビジネス渡航者は、空港で端末のデータ確保などを懸念し、業務機ではない“バーナー端末”(焼却可能な端末)の利用やデバイスの初期化などを余儀なくされており、出張計画にも影響が出ています。
政治的・思想的背景のスクリーニング
アメリカ政府は、政治的・文化的見解を理由に入国拒否や強制送還を行う場合があるとされ、特に反イスラエル的な見解やパレスチナ支援姿勢などが現在、重点対象として注視されています。
3. 入国審査の流れを知っておく
-
到着後、入国審査(CBP)へ
→ パスポートと必要書類を提示 -
指紋採取・顔写真撮影(大人・子供問わず)
-
質問(職業、目的、滞在期間など)
-
必要に応じて二次審査(Secondary Inspection)
→ SNS・電子機器検査、追加質問、所持品検査など
これらを踏まえると、
「何を聞かれてもすぐ出せる資料と、問題ないSNS環境」が入国スムーズ化のカギです。
この記事へのコメントはありません。